ファッションクリエイション学科の学生がドラマの衣装制作を担当しました
2023.03.20
東京キャンパス・ファッションクリエイション学科2年生の宮坂あみさん(アーティスト名:宮坂青)が、2023年3月から放送している土ドラ「自由な女神 バックステージ・イン・ニューヨーク」(東海テレビ・フジテレビ系列)で、武田真治さんが演じるドラァグクイーンのドレス衣装制作を担当しました。第2話(3月11日)と最終話(3月25日)で制作した衣装が登場!
≪番組情報≫
東海テレビ・フジテレビ系
「自由な女神 -バックステージ・イン・ニューヨーク-」
2023年3月4日(土)~ 3月25日(土)毎週土曜23時40分~24時35分
出演:井桁弘恵 古川雄輝 三浦獠太 宇垣美里 / 武田真治
▼見逃し配信はこちら
https://www.tokai-tv.com/jiyuunamegami/vod/
「デザイナー志望」のドラマの主人公と自分を重ね、涙出る
Q.3月からドラマが放送されました。どんな思いでしたか?
リアルタイムでみていて、ずっと叫んでいました!わーッ!!みたいな(笑)。
このドラマのストーリーは、ファッションデザイナー目指している「サチ」という女の子の物語で、武田真治さんが演じる「クールミント」さんというドラァグクイーンの方に出会って、色々と話が展開していくんです。
(デザイナー志望の)サチが作る服を、私が作ることになったので、本当に何かストーリーが自分と重なって、一層感情移入したというか普通に泣きましたね。
サチが熱中して周りが見えなくなったこととか、クールミントさんに「なんかもっと楽しくやってもいいんじゃないの」みたいなことを言われて実際に自分も作っているときも、本当に夢中になりすぎて周りが見えなくなっちゃっていることがあったので、「このことを忘れてはいけない」と思いました。
ファッションクリエイション学科2年生の宮坂あみさん
学生じゃない、私は「プロ」
Q.最初に武田真治さんとお会いしたときはどんな会話をしたのですか?
武田さんと最初にお会いしたときに、武田さんに「プロの方ですか?」って聞かれたんですよ(笑)。バイト帰りの遅い時間だったので、学生ぽいとか若い子みたいな感じに見えたと思うんですけど、そう聞かれて、そのときにとっさに出た言葉が、「プロでやってます!」って言っちゃって!!
これまで個展も開いていたのですが、やっぱり見てくれる人がいるのであれば、自分は「プロ」でやらなきゃならないというのがあって、「自分はアマチュアです」って気持ちでやるのって逆に失礼だと思うし、それは嫌だと思っています。でも、今回の衣装制作は、初めてで、、、だから本当はそのとき、「学生ですが今回の企画に携わらせていただきます」みたいな感じで伝えればよかったのかもしれないのですが、なんかとっさに「プロです」って言っちゃって、監督とか周りの人がフォローしてくれました。でも武田さんは、とっても優しくて「そうなんだ。よろしくね!」みたいな感じでした(笑)。
宮坂さんが制作した衣装は、
ドラァグクイーンを演じる武田真治さんが着るドレス4体。
第2話と最終話で登場しました。
※一番左のドレスは、現場で仕上げたため、制作中のもの。
初めてつくる「動き」に対応したドレス
Q.実際に制作して、苦労したところはどんなところですか?
すごく難しいなと思ったのが、この衣装でダンスをするので、結構大きな動きがあるんですよ。今まで飾るための服の制作をしていて、キレイにつくることを考えれば良かったのですが、大きな動きに合わせるような服を作ったことがなくて。。。関節の可動域とかは、国際ファッション専門職大学に入学する前に、医療系の大学で学んでいたので、理解はできていたのですが、ダンスをするときに綺麗に見せる服とか、ダンスのときに身体的に邪魔にならない縫い目にするとか、本当に専門的な技術力がないことを痛感しました。そして撮影当日に、武田さんが実際に着てもらい、動いて下さるんですけど、「ここの部分の衣装がちょっと邪魔かもしれない」とか、「これだと動きにくいかも」と言って下さって、そこで直すみたいなことがありました。そのときは、スタイリストさんが協力してくれたのもあり、わりとトラブルなくできたと思います。
こちらの衣装の赤丸部分が、ダンスの動きに合わなく、
急遽スリットに変えた箇所。
そして、やっぱりすごく苦労したなと思ったのが、納期に間に合わせることでした。まず1回目の納期があるんですけど、そのときに既にある程度作り上がっていてイメージできるようにしないといけなかったんです。お正月を挟んで、制作する期間が6日間しかなくて、とりあえず3着つくり、その後もう一週間で1着つくるというスケジュールだったんです。更に大変だったのが、家庭用のミシンが家にあって縫っていたんですが、生地が特殊で、なんかうまく入っていかないんですよ。パターンとかデザインとかは割と早い段階でできて決まっていたのは良かったのですが、縫製の技術とかすごく難しかったです。
「伝わっている」デザインを目指す
Q.大学の講義で今回の衣装制作にいかされたことは?
大学1年生のときに「ファッションデザイン実習Ⅰ」というのがあるのですけど、その時に永澤陽一先生が仰っていたのが、「デザインを見て、「伝える」っていうスタンスじゃなくて、通りすがりの人にでも「伝わっているデザインにしなさい」っていうのが、最初の授業でありました。その前からちょっとモノ作りをしていて、その時は、まだ「こういう風に伝えたい」「伝えたいからこれを作る」っていうスタンスだったんですけど、その講義を受けて、すごいデザインは「伝わっている」ものなんだって学んだので、今回は、「伝わっているものじゃなきゃ絶対にダメだ」とそこを最低ラインにしました。その講義がなかったら、その前提がなかったかもしれません。
「伝わっている」デザインの構築に幾度となく
イメージの整理を行った。
個展開催とインスタの力
Q.なぜ今回の衣装制作に抜擢されたのか?
きっかけは私が個人で開催した個展にプロデューサーさんが来てくださって、インスタフォローしてくださってたんですよ。なので、私が何か投稿する度に見てくださったみたいで、たまたまそこからご連絡をいただきました。
プロデューサー 齋藤寛朗さん
(制作プロダクション・カズモ)のコメント
コロナ下である2022年春、通りすがりの表参道のギャラリーで展示していた宮坂さんの衣装を拝見して、若さと伝統のぶつかり合いみたいなものが気になりインスタをフォローし、その後の活動も注目していました。今回のドラマで、旧世代から新世代の架け橋として「和洋折衷」の感覚を取り入れたくて、スタイリストや監督に、写真を見てもらったところ、アポを取ってみようということになりました。初めてお会いした時の、彼女の物事への真摯な姿勢が、頼もしい衣裳制作者の一人として参加いただくきっかけになった気がします。今後の活躍を期待しています。
きっかけとなった個展
「一本の糸展」(2022年3月15日~21日)
インスタよりも「リアル」にこだわる
今の時代、インスタに発信するって結構当たり前になっていると思うんですけど、わりとインスタって自己満足だなと思ってて。これまでインスタに自分の描いた絵とか載せていたんですけど、ただ投稿して、そこで完結していまう。インスタだけで完結しちゃうと、それは趣味の領域で終わってしまう。また誰でもやれるし、「アーティストです」っていうのも誰でも言えるので、それだったらもう5万といるよねって。だからあえて「リアルの場」でやってます!というか。
熱意とやる気と「行動する」
私が個展を開催できたのは、その個展の会場の方がとても良い人過ぎたんです。何かその良いなって思う場所を見つけて、自分から作品をちょっとだけ持って、自分はこういう者で、こういうことがしたいのでやらせてください、と頼みに行ったんです。
でも表参道だったので、すごい金額なんですよ。1週間30万円とか普通なんですけど、学生の自分の姿勢をちょっと汲んでくださって、6、7万円とかで1週間やらせてくれることになったんです!それで2回目、3回目の個展では、「無料でやっていいよ」となり、「やります!」みたいな感じになったんです。
本当にその方の好意がなければ、プロデューサーの齋藤さんともお会いできていなかった。
自分の作った衣装が生かされて成長していく
Q.プロの現場だからこそ感じたこととは?
これまで個展とか開いてきて、それは自分だけの判断で行動するんですけど、それがこういう公共の場、テレビとかで、誰かがOKって言ってくれなきゃ始まらない仕事っていうのが嬉しすぎました。たくさんのスタッフ、人がいて、こういう雰囲気にしたいのでこれでお願いしますって言われたものに対して、その方のイメージと私が考えたイメージがうまく一緒になってどんどんブラッシュアップしてく感じがしました。
そしてプロの人たちが集まる現場では、いろんな化学反応が起きるんですね。私が作った衣装を武田さんが着て、監督やカメラマンや照明さんやいろんな人たちの「プロの力」が集まって、モニターを通すと100億倍くらい光ってみえるというか。もう全然、見え方が違うんですね、もうびっくりでした。自分が作ったものが、生かされて成長していく、それが私が経験した現場での感動です。
「服の先」にあるのは「楽しさ」
12月末から衣装制作を始めて、1月がクライマックスだったんですね。その1月は学校でも、すごい量の課題が出ていたんですけど、この衣装制作があるから逆に頑張れるというか(笑)。やっぱりドレスを作るっていうのが自分の将来の夢でもあり、一番楽しいことであるのでそれをやらせてもらえる楽しさに今も酔いしれています!
宮坂さんのインスタグラム。
個展開催の情報も随時掲載しています。
聞き手:淺野麻由(教員)
関連学科
東京キャンパス
スタイリストの中野雅世さんからのコメント
今回武田さんの衣装を作る上で宮坂さんの衣装はかかせない存在だったなと思います。
サチという独学で洋服を作っている女の子の繊細さが宮坂さんの作るものに感じられるのがとても良かったと思います。