大学情報
2025年度入学式を挙行しました。
2025.04.11
4月6日(日)、国際ファッション専門職大学入学式を挙行しました。今年も東京・大阪・名古屋3キャンパスを中継で繋いでの開催となりました。
来賓祝辞では、「23区」「組曲」などを展開するアパレルメーカー大手の株式会社 オンワードホールディングス 代表取締役社長 保元 道宣氏が登壇されました。保元氏は第一期生の入学式から6回目の列席となります。

株式会社 オンワードホールディングス 代表取締役社長 保元 道宣氏
続いて、歓迎の辞では、在学生代表が日・英の2か国語でスピーチ。その言葉を受けて、3キャンパスそれぞれの新入生代表が入学後の抱負を述べました。

在学生代表 歓迎の辞

東京キャンパス新入生代表

大阪キャンパス新入生代表

名古屋キャンパス新入生代表
さらに、学長訓示にて、近藤誠一学長は「これからの4年間は、結果ではなく、過程であること・よい友達をつくること・そして自分の本質、存在の原点を知ることを心がけてください」と新入生に向けメッセージを送りました。

国際ファッション専門職大学 近藤誠一学長(元文化庁長官)
学長訓辞
Dear all incoming students,
Congratulations on your entry into this university!
I also extend my warm welcome to their families and friends.
新入生のみなさん、ご入学おめでとう。
ご家族、ご友人の皆さまにも、心よりお祝いを申し上げます。
今年も満開の桜の下で、入学式を執り行えることは、日本人として何よりうれしいことです。
この大学が設立されたのは2019年で、今年で7年目に入ります。つい2週間ほど前に、第三期生を社会に送り出したばかりです。
この大学の教育の第一義的目的は、広い意味のファッション分野で必要とされる専門知識や技能と、世界で活躍するために必要な一般教養や語学を含むコミュニケーション能力、AI操作能力をバランスよく兼ね備えた人材を育てることにあります。
専門知識・スキルという経糸と、一般教養という横糸がしっかりと織り込まれることで、世界で通用する人材が育ちます。
そのために大学は教室での授業やゼミに加え、インターンや臨地実習、海外留学など多彩なカリキュラムと、制度、設備や施設を用意し、教職員もそれにふさわしいより抜きの方々を集めています。これまでの卒業生の殆どはそれをフルに活用して、自分の希望する人生を歩み始めました。
しかし高等教育機関として、私たちにはこれと並行してもう一つの重要な使命があると考えています。それは学生のひとりひとりが、どの分野に進むにせよ、そしてそこでどこまで成功するか否かに拘らず、重要なことです。それはこの4年間で人間として成長し、人生を「生きがい」をもって有意義に過ごすことができる「人間力」を身につける機会を提供することです。それは、自分は「どのように生きるべきか」、困難に直面したら「どうやって乗り越えたらよいのか」について自分なりの答えを見つけ、自信をもって社会に出て、その未来に貢献できるひとを育てることです。
この点で3つのことを申し上げておきます。
第一は、人生で重要なことは、どこに到達するか(何を成し遂げるか)ではなく、自分が設定した目標に向かってどこまで努力を続けられるかであるということです。社会は複雑で、未来は予測できません。自然現象を扱う天気予報と違って、人間がつくる社会の未来を予測することはできません。今の時代は、しばしば先の見えないVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代と言われますが、先が見えないのは昔からのことです。そしていま日本は自由な国です。誰もが自由だからこそ、未来はますます予測不可能になるのです。
AIにも未来の予測はできません。もし未来が分かったらどうなるでしょう。昨日偶々ある劇場で、今日開幕の、映画で有名な「バック・トウー・ザ・フーチャー」を観ました。そこではタイムマシーンを作ったエメット・ブラウン博士によるセリフが印象的でした。それは「未来のことを知らされるのは、むしろ危険だ」というセリフです。なまじ未来が分かったら、みな自分の都合の良いように変えようとして大混乱になるでしょう。
だから未来が分らぬことは何のリスクでもなく、そもそも未来は分からないものと割り切って、その上で自分の目標に向かって努力を続けることが重要なのです。目的達成度ではなく、あらゆる困難を乗り越え、失敗を重ねながら最後まで努力を続けるその過程が重要なのです。
そもそも人生には、ここまでくれば成功という「到達点」などありません。歌舞伎の坂東玉三郎さんは、芸とは山の頂上を目指してこつこつと精進することだが、頂上が見えてくると、必ずその先にもうひとつの山が見えてくると言っています。
評論家の小林秀雄さんも、批評というものは科学のように目的地を設定しない。大切なのは日々の「歩き方」であり、到達点はその結果に過ぎないと述べています。日々どう歩くか、どうやって毎日最善を尽くしかが大切なのです。
先ほどの劇に話を戻します。会場で見たプログラムには、開幕に至るさまざまな準備の模様が写真付きで書かれていました。本番の講演は本当に素晴らしかったですが、そこに至るまでの役者さんたちの稽古の模様や感想、大道具・小道具の方々の苦労話など、本番に至る過程が、本番以上に彼らの人柄を伝えてくれて感動的でした。本番はその結果に過ぎないとすら感じました。
みなさんもこの4年間、いろいろな困難に直面するでしょう。授業が分からない、つまらない、友達ができない、折角できても喧嘩して仲直りができない、バイトができず経済的に苦しいなど。でもそれは努力の途中で通らねばならぬプロセスのひとつだと考えて、次の手を打つことで打開して下さい。リスクを嫌い、黙って引きこもってしまうと、それが「結果」になってしまいます。過程のひとつと捉えて、思い切って前に出るのです。
人生を生きるとは、困難と闘い、乗り越えるプロセスなのです。リスクや困難のない人生はありません。失敗を恐れず、どこまで努力を続けられるかを試せるのが大学の4年間です。大学には親身になってアドバイスをくれる教員が沢山います。リスクだらけの社会に出るまでに、リスクの対処の仕方や困難に立ち向かう心構えを鍛えておく絶好の場が大学なのです。
「生きるとは何か」を学ぶ上での2つ目のポイントは、友達づくりです。自由に語り合える友達こそが人生の財産です。1937年に出版されてベストセラーになり、最近リバイバルとなって漫画にもなった、吉野源三郎さんの『君たちはどう生きるか』 の最後のページには、主人公のコペル君が、「よい友だちをもっている幸福」がその胸によみがってきたという記述があります。大学で最も重要なことは、「何を」学ぶかではなく、「誰と」学ぶかです。勉強をしながら自由に「対話」をすることで、専門知識も、一般教養も真に自分の血となり肉となるのです。縦糸も横糸も、友達と一緒に織ってこそ、しっかりした布が織れるのです。そして困難を「過程」ととらえて前向きに捉えることも、友達と一緒なら容易になります。
第三は、自分の生まれ育った国の一員であることの自覚です。人間は誰もがアイデンティティーすなわち「自分とは何者なのか」の答えを求めます。自分の拠って立つ基盤が何かを知り、それに誇りをもって初めてひとは「生きがい」を感じるからです。君たちにとって、それは日本人、あるいはその他の人は自分が生まれ育った国の人々、が長きにわたって培い、継承してきた伝統文化を自分の一部にすることから生まれます。
日本人の伝統的思想は、自分たちは自然の一部で、自然との調和を常に心がけることが大切であるというものです。それが伝統文化のあらゆるところに現れている思想です。そしてそこから「和」や「思いやり」、「利他性」の心が生まれてきます。
これは日本人の美徳であるだけでなく、今の人類が最も必要としている精神性でしょう。そして日本の着物などの伝統工藝に代表されるように、君たちがこれから学ぶファッションは日本文化がサステナビリティーにおいて極めて優れた伝統をもっていることを世界に知らしめる絶好の分野なのです。日本人以外のひとたちも、この日本人の精神性から学ぶことは多いでしょう。
これからの4年間は、以上の3点―人生において重要なのは結果ではなく、過程であること、よい友達をつくること、そして自分の本質、存在の原点を知ること―を心がけて下さい。
それは国際舞台で活躍する上で大切なアセットとなるでしょう。
私はこうしたことについて、これまで皆さんの先輩とやってきたように、是非皆さんとも教室外で自由に話をする機会をつくりたいと思っています。
有難うございました。
I wish a good luck !
入学式の様子は、本学の公式Instagram(@piif_official)や各キャンパスのInstagramにも掲載しています。ぜひご覧ください。