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【教員インタビュー】『ジョン ガリアーノ』アシスタントデザイナー、東京コレクション参加など、自らの経験を次世代のクリエイターへ
2021.09.24
『EKAM(エカム)』、『RABD(アール エー ビー ディー)』デザイナー
准教授 三木 勘也
本学では、世界のトップブランドに精通した実務家教員より、実践的な知識・技術を学ぶことができます。
第一線で活躍するデザイナーでありながら、大学でも教鞭をとっていらっしゃいます。授業では、何を1番学生に伝えたいと考えていますか。
ベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーに在学中、マルタン・マルジェラやデムナ・ヴァザリエ等、数多くのデザイナーを輩出してきたリンダ・ロッパ女史から多くの影響を受けました。そしてデザインをして何かを創造することの可能性を知りました。それは、創造したアイディアは自らの行動で具現化できるということです。
また、その後のパリでの極貧生活の中、制限された条件の中で、どのように製作に向き合えばオーダーされる商品が生み出せるかという方法論も見いだせました。つまりは、クリエイションとはセンスや才能に裏打ちされたものではなく、訓練によって誰にでもできるものだとわかったのです。海外で行ってきたこと、または日本でブランドをキャリーしてきたことを通し、次世代のデザイナーの役に立てることがあると思い、それを伝えられるよう、日々努めています。
『ジョン ガリアーノ』でのアシスタントデザイナーの経験について教えてください。
『ジョン ガリアーノ』はアトリエの規模が大きく、入りたての頃は主任デザイナーから指示されたテーマを自由に形にしていくという作業を行っていました。デザイン画を描くという提案の仕方ではなく、アトリエ内にストックされている端切れや在庫生地、その他付属品などを使って様々なデザインをテーマに沿って実際につくるという作業です。ディテールであっても、実際の服であっても何をつくってもいいという環境でした。
自由といっても数時間ごとにチェックがあり、上が望むものが形になっていないと判断されると他のアシスタントデザイナーのサポートに回るという、厳しい世界でした。それを数か月行った後、主任デザイナーとの仕事ではなく、ガリアーノでずっと働かれてきていたデザイナーへの縫製担当をしていました。その方が最初のディテールを大まかに作り、その後を仕上げていく流れで、こちらは数時間で仕上げていくような内容ではなく比較的ゆとりを持って仕事ができていました。
東京コレクションでの経験について教えてください。
実は、東京コレクション参加のためではなく、あるプロジェクトへ向けてそれなりの体数をつくっていました。しかし、プロジェクトの進行が難しい状況となり、そこでJFW(一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構)に問合わせたところ、参加許可を得ることができたため、さらに数を増やしてファッションショーとして持っていったというのが参加の経緯です。
演出家の若槻善雄さんをはじめ、多くの方のご協力のもとにショーを行うことができました。東京はパリやミラノに比べショーを行うことへの規制が当時はそれほど厳しくはなく比較的自由に参加できるという環境でしたので年1回のペースで行おうと思っていた矢先、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う非常事態宣言に見舞われてしまい、2度参加させていただいた後は控えています。また、世の中が落ち着いてきましたら、ぜひ参加したいです。
ファッション業界を志す学生に一言お願いします。
学生の間に色々と挑戦してほしいと思います。つくってみたいと思うものがあればつくってみる、行きたいところがあれば行ってみる。見たいものがあれば見に行ってみる。もちろん常識の範囲内で。
与えられたものばかりではなく、自らの意思で進んでいくことによって、見えてくるものがあります。そしてそれらは何年たっても忘れず心の中に残っています。たとえそれが失敗であっても。
大人になって思い返せば笑えることもありますが、どうなるのか試してみたいと思ったらやってみる。お風呂で帽子の水平ラインを見るために真っ黒なお湯に大きい立体をつけてみたり、その後、お風呂がしばらく変色していたり、今思えば水でいいやん!っていう。またまた、お風呂で15m位生地染めて熱湯で手がはれたり、熱すぎてその感覚がなくなったり、藍染め職人みたく手が数週間インディゴブルーだったり、ときには、ろうけつ染めで炎が天井まで上がって火事寸前になったり。映画バックドラフトで壁に炎があたってぼわんってなる感じ。
今はSNS等に費やす時間も多いでしょうし、学生の間だからといって時間があるというわけではないと思うのですが、やはり学生時代は自分のための時間が多くとれる期間だと思います。その時間を自ら行ってみたいことを行うことによって多くの経験、知識が得られます。最初は小さなことであったとしても、その中で本格的に取り組みたいということも出てくるだろうし、そういった経験が自信となり、今後の仕事にもつながっていくのだと思います。学生時代、学業にも趣味にも研究にも有意義な時間を過ごしてください!
▲三木教授の展開するブランド『RABD』2020 S/S 東京コレクション
■准教授 三木 勘也
アントワープ王立芸術アカデミー ファッション科を主席で卒業(美術学修士)。『John Galliano(ジョン・ガリアーノ)』や『Walter Van Beirendonck(ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク)』等のアシスタントデザイナーを務めたのち、パリで自身のブランド『KOSMETIQUE LABEL(コスメティックレーベル)』を立ち上げ日本のみならず、イタリアやドイツ、アメリカ、イギリス等へも卸を展開し世界のセレクトショップの注目を集める。日本に帰国後は他に『EKAM(エカム)』、『RABD(アール エー ビー ディー)』を展開。