大学情報
2023年度 卒業式挙行。LVMH JAPAN社長らが卒業生たちにエールを送りました。
2024.03.29
2024年3月20日、国際ファッション専門職大学の卒業式が行われました。
オープニングセレモニーではLVMH JAPAN株式会社 代表取締役社長 ノルベール・ルレ氏が登壇。ファッション業界の楽しさや自分の好きなことを追求する大切さについて語りました。「LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)」「DIOR(ディオール)」「CELINE(セリーヌ)」「TIFFANY(ティファニー)」など世界的に有名な数多くのブランドを保有するLVMH JAPANは、2021年より本学とパートナーシップを結んでいます。
「ルイ・ヴィトン」「ディオール」を有するLVMH JAPAN 代表取締役社長 ノルベール・ルレ氏
華やかなオープニングの後、式典は各キャンパス学生代表への学位記授与、近藤誠一学長による訓辞と続きます。
また、来賓祝辞として「23区」や「組曲」などを展開するアパレルメーカー大手の株式会社 オンワードホールディングス 代表取締役社長 保元 道宣氏より届いたビデオレターも上映されました。
学生代表への学位記授与
卒業生答辞
各賞の授与ではたくさんの学生が表彰されますが、その一部をご紹介。
学長賞を受賞したのはファッションクリエイション・ビジネス学科の大下彩楓さん。「第96回装苑賞」でグランプリの「装苑賞」を受賞。また、唯一の現役大学生デザイナーとして、東京ガールズコレクションと愛知県一宮市とのコラボレーション企画に起用されたことなどが高く評価されました。
「第96回装苑賞」でグランプリを獲った大下彩楓さんが学長賞受賞
校費留学生認定証授与では、受賞したファッションクリエイション学科の成瀬擁汰さんが在学中に打ち込んだ研究テーマや今後の目標について語り、留学に臨む決意は英語でスピーチしました。こんな光景もグローバルな学びを提供する本学ならでは。校費留学制度の対象者には留学に必要な渡航費や1年間の学費が支給されます。
成瀬さんは『夢を夢で終わらせない支援金』も受賞。卒業後にかなえたい夢に関するプレゼンテーションがユニークであると認められ、100万円を獲得しました。
『夢を夢で終わらせない支援金』受賞で100万円を獲得した成瀬擁汰さんは校費留学生にも選ばれイタリアへ。
東京・大阪・名古屋3キャンパスを中継で繋いで挙行された卒業式。新型コロナウィルス感染拡大により入学式が行われなかった2020年4月に入学した2期生たちですが、思い思いの晴れ姿で卒業証書を手に最高の笑顔を見せてくれました。
学長訓辞
本学での4年間の勉学を終え、社会に旅立つ二期生のみなさん、ご卒業おめでとう。そして保護者のみなさま、これまでの本学教職員に頂いたご協力のお陰で立派な卒業生を出すことができましたことに感謝し、心よりお祝い申し上げます。
皆さんにとってこの4年間は、ファッションに関連した専門知と技能、そしてそれを新しい時代に生かす一般教養を身につけることで、生涯の活躍の基礎となる人間力をつくる4年間でした
同時にそれは、温暖化の進行や、新型コロナ感染症の世界的蔓延に対応するため、われわれの生活が大きな制約を受けた4年間でしたね。
そしてウクライナにおける戦争やガザ地区における武力衝突など、戦後の国際関係の安定と繁栄を大きくゆるがす事態が起こりました。そこで明らかになったことは、ひとつの問題の奥には極めて複雑で相互に絡み合った要因があり、最新鋭のテクノロジーをもってしても、容易に解決はできないということです。こうした理由により、行く先に予測不能な暗雲がたれこめた4年間でもありました。
他方で、生成AIの登場に代表される、IT技術が目覚ましく発展し、利便さと情報量が飛躍的に増大した4年間でもありました。
大きな希望と、大きな不安に満ちた未来を感じさせる4年間だったでしょう。
みなさんがこれらのことをどのように受け止めたかは、人それぞれでしょう。しかしこの豊富な経験が、みなさんの勉学に目に見えぬ広がりや深さを与えたことは間違いありません。
それはわれわれに以下のことを教えてくれたからです。
それは、世界はこれまで考えてきたように、平和と安定、繁栄と進歩に向けて一直線に進むものではないということです。人間とは、そして人間がつくる社会とは、常に善と悪、正義と邪悪、利己心と利他心の両者の要素を併せ持つものです。そして善の実現に努力しても、時として悪に負けることがあります。また善が実現したと思っても、いつの間にか崩れてしまいます。人間は弱く、善は脆いものです。
人が生きるということは、そのような世界の中で自分を冷静に見つめ、常に自分にとって善なるものを追求し、悪に負けても諦めずに必ず立ち直って再び善に向かい、それを続けるということです。人生も社会も、このように善と悪の間をいつまでも行き交う振り子のようなものなのです。
いまは世界の各所で悪が力を得つつあります。われわれはこれを早く抑え込んで、振り子を希望のもてる方向に押し戻さねばなりません。
みなさんは最近アカデミー賞長編アニメ映画賞をとった宮崎駿監督のアニメ 『君たちはどう生きるか』 をご覧になりましたか?また昭和初期に書かれ、最近漫画にもなった吉野源三郎の、同じタイトルの書籍を取り出したひともいるかも知れません。
両者のストーリーは異なりますが、メッセージには共通性があります。一言でいえば、ひとは、世の中の複雑な流れをよく観察してその中に自分を正しく位置づけ、その中で自分の中にある悪を抑えて善の実現に努力することによって、社会をよりよい方向に進めることに貢献することができる。そしてその努力を最後まで続けることこそが「生きること」だということです。
人生の目的とは、何か具体的な成果を成し遂げることではありません。この努力を最後まで続けることなのです。この世を去る時、「私はこれを成し遂げた」といって満足できるひとはいないでしょう。「私は死ぬまで、どんな障害にもめげずに努力を続けて来た」と思うところに、満足感が生れてくるのです。
そのような生き方をする上で大切なのは、自分が得意とする技をもつことと、世の中の流れとその先を把握し、自分がその技をクリエイティブに発揮するに最もふさわしい場を見つけることです。これらはあなた方のこれからの人生を織りなす「経糸」と「横糸」なのです。
この横糸を成すものが一般教養です。英語でいう「リベラルアーツ」に相当します。「リベラルアーツ」とは、中世のヨーロッパで生まれた概念で、奴隷のような制約を受けずに、自由人として何の束縛も受けずに真理を追究し、自分の生き方を考えるのに必要な学科という意味です。
奴隷制度はなく、自由な現代のわれわれに何故リベラルアーツが必要なのでしょう。答えは、いまのわれわれは立派な奴隷制度によって縛られているからです。それは目に見えない「思い込み」という束縛です。それは数値主義、効率主義と、短期成果主義です。コスパとタイパという評価基準が職場やメディア空間を我が物顔に歩いています。その結果問題は「その場しのぎ」で処理され、大事で複雑な問題は「先送り」されています。それが冒頭指摘した温暖化や戦争の解決を阻み、人類は大きな悲劇を招きつつあります。
みなさんは授業や隣地実習、インターンシップ、海外留学を通じて、ファッションという分野での自分の得意技と、日本人が引き継いできた繊細な美意識、そして広い視野とコミュニケーション能力を身につけました。それはみなさんがこれからを生きる上で、不可欠な武器となるでしょう。これからは今持っているこの経糸と横糸に満足せず、それらを常により強く、より美しいものにしていく努力を続けて下さい。その努力を続けてくれて初めて、本学の教育の最終目的が達成されたことになるのです。
二期生のみなさん、改めてご卒業おめでとう。